O氏の治療歴;号外号外!皆様ご心配をおかけしました。

アリゾナ以来、S君はずっとO氏の状況を写真に納め、いくつもファイルしている。具合悪い時、元気な時、皆と一緒の時、食べている時、出かけた時、ほぼ網羅している。これは特に意味はない。S君はこんな風にO氏を撮りたいだけなのだ。子孫がいれば、後に、グランマとグランパの写真だよって、子供達が大切にしてくれるかもしれないけど、見渡す限り、二人には親族というもののつながりがない。故にお友達の親族が限りなく羨ましくもあり、ありがたくもある。

先週の慌ただしかった数日の、ちょっとした写真をここに入れたいと思ったS君。何卒、お許しあれ。

9月26日(月)、何時間もずーっと看護師さんが呼びに来るのを待ったのでした。病院の窓外は間断なく救急車が走り回っている

O氏の治療歴, そして今これから。その28

そういえば、付け加えというか、昨日10月4日(火曜日)はO氏の定期検査の日でもあった。もちろん!予定に組み込まれているキモセラピーは中止。その代わりに、先週の生検の結果をドクターから説明していただくのです。しかしながら、今しがた出かけたはずのO氏が駆け込むように戻ってきて(S君は他の用事でO氏と行かなかった)説明もそこそこにトイレに直行。なんでも、ニューヨーク行きのバス停に向かう途中に猛烈な吐き気と腹痛で、(事実、実はよくあるのですが、O氏はいよいよ突然下痢になることが日常化している)とてもじゃないが今日は無理、と。そこでS君、キャンセルのお願いを主治医に伝える。輸血も、100%信頼できるわけでなく、たかだか10日たらずで本来のO氏の身体に限りなくフィットしているのかそうじゃないのか未だにケアフルなところです。

ひとつ嬉しかったのは、肝臓生検の結果を電話ミーティングに切り替えていただき、懸念していた肝硬変では無いこと、腫瘍も大丈夫なこと、ただ、なんだか(肝心なことがS君はわかってない)肝臓に付随する血管が弱って狭くなっており、これらは状況的に、少しずつ普通に戻るだろうから、とのこと。

何度でも言いたいのだけど、O氏のがん細胞は依然としてステイブル、消失したってことはないけど限りなく良い兆候。故に!!鍼灸とかマッサージ、いろいろ代替治療もやりたいよね。

〜〜〜続く

O氏の治療歴, そして今これから。その27・加えて医療ミス・加えて大量の輸血

せっかくの腹腔穿刺も、翌々日には見た目もほぼ同量が戻ってしまった。水枕のようにタップンタップンしているのではないけど、本人はその快適とは言えないお腹の膨らみのため 速歩が難しくなってきている。抜いた腹水そのものの検査の結果は、微量ながらガン細胞が混ざっているらしい。腹水が減ったので再び肝臓生検。早くしないと元の木阿弥。.S君の調べでは生検は危険そのもの。だって外部から、ガンとか炎症部位に器具が入り込んで肝臓なら肝臓の一部を切り取り出すわけです。(検査のためなんだけど)つまり散らばってしまうのよ。

、、、、今現在、2022年9月29日、午後10時28分。

そして、今、10月5日(水曜日)。日が瞬く間に過ぎてゆく。

9月26日、O氏は腹腔穿刺の後、間髪おかずの肝臓生検。危険であり、医療ミスも後を絶たないと言われている、前回は奇跡だったのかも、、、何事もなく。これは、ミス、というよりも超音波で危険の少ない部位を選び、その画像を頼りに器具を入れ肝臓の一部を切り取る。むしろ、ロシアンルーレットかもね。こんなことが最新の医療でもある。

ま、穴の空いたO氏の肝臓から腹腔内に血液ダダ漏れ、大きい4パックの輸血。即、止血の緊急手術。きっちり覚悟をきめたS君。目の前で人が死んでゆくってこういうことね、まずは親しい友人たち、O氏のテキサスに住む妹にテキストを送る。さあて、どうしよう。何も考えられずじっと固まっていた。驚くほど静かな気持ちでもあった。〜〜〜〜、とりあえずは一命をとりとめた、っていう月並みな言葉しか考え付かない。日本と違って、こちらはおそらくは、保険会社との兼ね合い?脈や血圧が戻った時点で即退院(汗)、それが9月29日。

この後に、とんでも無いことが起こり、それは、個人的なブログに書きたいとS君。

〜〜〜〜〜 続く

々から

O氏の治療歴, そして今これから。その26

9月6日、先週は 血小板数の値が低かったが、今日はノーマルということで、タクソル・キモセラピー3回連続の1回目。ALPは緩慢ながら数値が下がっていて(2週間キモを取らずとも数値が下がっている、のにどうしてキモなんぞを打たせたいのかしらねー?謎)やっぱりうれしい。さらに気をつけている食事と足踏みマットの効果だよ、と言いたい気分。O氏がお医者様や病院に最大限 信頼を寄せているのだから放っておこう、といつも思うのに でもさー、、の繰り返しはS君にとって緊急になんとか心に折り合いをつけたい課題なのです。

9月7日、腹腔穿刺【ふくくうせんし】のため、4時ちょっとの早朝バスで病院に向かう。腹水の溜まっている状態での生検はかなりのリスクを負う、らしいので、初めの予定通りに腹腔に溜まっている水分を抜くわけです。O氏はいささか緊張気味、珍しくS君に突っかかる、けれどS君はお手のもの。かつてS君の実父母もそうだったけど、ことに治療中や入院中 患者は家族やケアギバーに(恐らくは気安さとか安心感からか)わがままや意地悪を言うこともよくある話。

局所麻酔なので数十分、O氏はポトポトと管を通って排出される水音をずっと聞いていたって。健康な人でもいくばくかの腹水は当たり前のようにあるらしい。O氏は、いわば異常に水が溜まってしまっている状態なので今回のように検査あれこれで、どうしても抜かねばならないわけ。都合、1リットルほど抜きました。見た目はまだ膨らんではいるものの、随分と落ち着いたかね。それまではちょっと呼吸が苦しそうだった。

数日は安静にして様子を見るらしい。かなり大きい穴がお腹に開けられたかと危惧したものの、すぐに塞がったものか、お腹にひっつけられていたバンドエイドの端の、かぶれの発赤の方が痛々しい。病院を出るなり大食いのO氏に早変わり。帰りは日本の惣菜屋さんの生姜焼き肉弁当を食べ、ドーナッツを食べ!!S君にしてみれば、手術に耐えた子供に、今日は特別大目に見てあげましょう、との母親の心境。

とはいえ、ほぼO氏が S君の父親や母親を演じてくれるので、こうしてS君は徐々にインナーチャイルドを癒しつつあるのだけど、逆の立場でいえば、S君は単に鞭と鞭、または、飴と飴、の対応になってしまうんだろうか。どうも、O氏の癌発覚以来 この人への接し方をしっかり体得してないのかしら、とS君は身震いする。 〜〜〜 続く

O氏の治療歴, そして今これから。その25

8月30日、O氏は血液検査の結果『血小板数がかなり低い』ゆえにタクソル・キモセラピーは中止。 先日のMRIで脳の中の腫瘍は完全にフィクスされているものの、腫瘍部の周囲に出血だか何だかの異常が見られる、らしくて、脳の放射線治療ドクターと面談。ドクターは、心配する必要はないです、との見解でホッとするものの、診療看護師は異なった見立てをしている。。

猛暑の8月もじきに終わる。カレンダーをめくりながらS君は、ちょっと、、あたしの心が低迷してません?って自問自答している。O氏の治療の事、痛む足のリハビリや、アパート探しもあってちょっと疲れちゃっているかもね。

8月31日。肝臓専門医に再び診察を仰ぐ。末期の肝硬変は間違い無いのか。腹水を手術せずに少しずつ減らしてゆくには? 〜〜〜 素晴らしいお医者様です、明快に説明くださった。まず、これまでの血液検査で肝臓部の数値がいわゆる謎である。(典型的な数値配列であれば、ドンピシャで、これこれの病名が与えられ、よって治療もスタートできるけど)なので、さらなる精密検査のため昨日と同様、O氏はかなりの量の採血を終えたのです。?? S君の疑問 ;”血液検査のためのあらゆる血を集めると、プールどころかとんでもないおびただしい量になるのは間違いない、ちょっとした湖にはなるかもしれない!!例えば下水処理とかでは最終的に再び浄水に還元しているけれど、検査の後のこれらの血液はどこに行くのだろう。。

ところでO氏の腹水についても同様に、その液体の出所が数値からは把握できず、腹水の一部を生検します、とのこと。最悪の場合、、、これまでの化学治療(や、サプリメント含めての化学物質など)による(最近のワクチン接種含めて)肝臓不全(副作用というのが適切かな)の可能性も示唆されてなんとも言えない。心をフラつかせず真ん中にしっかり居よう。

当の本人でもあるO氏は、それより何より、連続してどっさり採血されフラフラなので 大急ぎ 遅いランチをとる。目の前のビルディングの屋上に何故か白旗が翻っていて、いろんな意味での無条件降伏なのかなあ、なんでもいいや。騒がず動じず。

9月2日、O氏の両足の超音波検査、これはひょっとして血栓防止薬の副作用が生じているかも、との診療看護師の依頼を受けて。 やれやれ、ずーーっと抗凝固薬をとっているので血がサラサラどころか出血しやすい状態になっているらしい? なのでO氏の脳内が出血している!!検査の結果で血栓が見当たらなければしばらく抗凝固薬を中止するって。

、O氏自身が 『僕ってモルモットなんだろね』と初めて のたもうた。 人の歴史で、様々な実験や治験が近代以降の西欧型医療を確立させている。けれどいつだって、自然・代替治療 は過小評価されてしまい化学治療が大通りを闊歩している。もっとも、ホリスティック医学がかなり浸透してきているのは事実、患者自らが自然治癒力を取り戻す自己療法、これらもかなりメインストリームに向かっている。もう少し自己療法に連れてゆきたいなあ。

一つだけ嬉しいこと;O氏は先日から朝と晩の2回、まずは5分ずつ足踏みマットを始めている。体温と血流、この二つさえキッチリ糺しておけば間違い無いという確信がある。調子良いって。また、血栓の予防は、生玉ねぎを50g 食すことで、血液がサラサラになり免疫力も戻るって。なのでこれも取り入れました。みじん切り玉ねぎをグリーンサラダにまぶしたり、今度はクリームチーズと和えてみるかな。

〜〜〜 続く

O氏の治療歴, そして今これから。その24

8月16日、なんとか頑張りましてO氏のキモセラピーは一旦おしまい。翌週のスキャン、その結果でキモを続行するか終了するか、が、決定される。S君にしてみればキモは大概にしてほしい!それどころかずーっと服用している分子標的薬・ローブレナの減量を願っている。両足のくるぶしを中心のむくみはまずくない??むくみ防止の薬と、副作用で浮腫みの出る薬と、キモだ何だに拠る血栓予防の薬、、、O氏の左上腕には、この三回連続のキモセラピーによる副作用防止のため、お馴染のペグフィルグラスティム (損なわれた白血球を化学物質で取り戻す)の注射針設置の箱がくっついている。正確に翌日の午後6時半になると針が発動し(立ち上がり)自動ショットが なされる。

〜〜 さて、22日のスキャンとMRIの結果、頭の中は全く問題無し。がん細胞は相も変わらずそのままステイブルである、ちょっとは縮んだものも。肝臓の腫瘍はかなり落ち着いてはいるけれども ’肝硬変’ の疑い濃厚、数値が再び跳ね上がってしまっている。ってなわけですので肝臓専門の先生のアポも取ることやら、もう少しキモセラピー(タクソル)を続けましょう、とのお達し。来週からまた、3週連続のタクソル化学治療ですね。O氏のポヤポヤ頭は元々がウエービーヘアなので、見た目はキューピー人形のように可愛らしい。

。。。。

先日出かけたスタンフォードでは、どでかい一軒家と(部屋数が多くて覚えきれない’ 笑)周囲ぐるりの庭付きで1200ドルという家賃。破格値といえばそうなのでしょう、。airB&Bでも合宿所でもアーティストの貸しスタジオでも、何でもビジネスは可能だろうね、もしここを終の棲み家に決めるなら。

被さってくる樹々、山の頂の高さで林が連なっている。くねくね柔らかなカーブの道路沿いに牧場が現れる、それでもなかなかたどり着かない。、、、、、遠すぎる。ニューヨークには車で4時間はかかるだろうし、冬は雪の中だろうなあ。じっくり落ち着いて小説とかエッセイとかを書くには最高かしら、、ご縁なさそう。

ロケーションとか広さ、などで探すと大抵のニューヨーク物件は家賃が2000ドルより上、っていうことは日本円で換算すると約30万円の家賃?!随分昔に初めて来た頃は確か平均で4〜500ドル内外で大抵の場所やスタジオ、は借りられたっけ。日本のレントより随分安いんじゃない?って驚いたよね。今は、例えばS君たちの住む郊外・ニューバーグで(ニューヨークまで車、電車、バスいずれも片道1時間半かもっと)それでも日本円換算の20万近い家賃を払っているわけ。しかも、『え〜!安いね〜!』って言われることがしばしば。どうしたって絶対に変じゃない?

大家さんのご都合で、S君O氏の住む建物は売りに出されていた(!)。ニューヨーク市内はどちらかといえば店子擁護法律かな(なので、店子の立ち退きが生じても解決するのは時間がかかる)、なんとなく郊外は、大家さん擁護の法律のように感じられる。『予期せぬ引越し』という機運。きっと知らない間に次に運ばれるための用意ができていたのかな。じゃあ安心して良い物件が転がってくるのを待ったほうがいいね。 〜〜〜〜 続く

O氏の治療歴, そして今これから。その23

8月9日、この日はO氏の合計で九回目の最後の最後のキモセラピー、と信じていた。つまりは前以て言われていた3X3=9という図式。前回は8月2日、いささか体調を崩してO氏は7月26日の週を休んだ。ので、結構延期も続いたものか、間の空いたキモセラピーさよならね。タクソルくん、ありがとねー。

人ごとのように書こう。病院としては、毎週一回で3回(3週)がワンセット、という流れがO氏の事情で延期になったことで、結局は今週が2回目、来週で晴れて連続3回目、のキモなんだって! その計算ちょっと変。つまりは、何らかの事情で来週のアポをキャンセルする、と仮定してみよう。すると、、、再来週から再び、最初の1回目のキモ、と計算され、っていうことはすんなり3週連続でタクソル・キモ治療を受けない限り、永遠にキモが終了しない、という理屈が成立する。。

しかも強いドースを今回も注入された。。。もう怒ったS君。危険水域のタクソル・キモの量を減らすよう交渉。同時に、O氏自身も『モルモットは嫌ですねー』とやんわり伝えた。

可愛くない患者(に、空恐ろしいケアギバーと思われているであろうS君)っちゃあそれまでだけど、今回、初めて!!!O氏が主治医にきっちり考えを伝えたのはとても嬉しい。ここしばらくO氏のアポと主治医の日程が合わず、それで大抵は診療看護師任せになってきていたこともあり、O氏の遠慮とそれゆえのS君の不信感は募ってきている。誤解を生じさせないためにも初心に戻って、O氏はしっかり疑問や考えを主治医に直接伝えなくては。

主治医ももちろんこちらの意向を理解してくださり、ちょっとした滞りが一気にスーッと流れた感じ。少なくとも患者が不信感を募らせないためにも、顔と顔でのコミュニケーションは必然だし、患者は自分に行われている治療を堂々と、正しく尋ねる権利はあるのだもの。患者=主治医=信頼関係。

ALP・肝臓値は今回も下がっており、とてもありがたいことです。

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8日はコミュニティガーデンに出かけた。S君はこの暑さにお手上げ、ではあるけれど歩行訓練もあるし、車ばかり使ってはいられない。早朝に40分ほどの距離を歩きトマトを収穫。あれほど茂っていたケールの株はすべてグランドホグに食い荒らされ仕方なく根こそぎさよーなら。さもないと、味をしめた彼が舞い戻るのは間違いないし、なんとか頑張っているカラードグリーンも食われてしまう!!

どうしちゃったのか、ケアフルなO氏がガーデンの網のフェンスに足を引っ掛けてしまい、先日のS君に続き今回はO氏、大転倒!!!左手のひらの惨憺たる傷以外はオーケー。

なにこれ? なんでー? ねー、なんでなのー? すべての厄払いはS君の転倒でおしまいって疑いもしていなかった。二人とも見える傷なので嘘も言えない。ひたすらO氏の傷がちょっとでも落ち着くことのみ念じている。完璧にこれは全てコメディだよね、S君は改めて確信する ーー 全て絵空事なんだ。目が覚めたら何もなかったのだろうなって。ただ、、、いささかコメディもすぎやしませんか?

〜〜〜 続く

O氏の治療歴、番外編:刀根健(とねたけし)さん

これまでも、癌の闘病記録やブログ、などなど勇気ある幾多の方々の本音の言葉や文章に感銘を受け、力を与えられていたS君。ところでこの1週間前だったかしら?7月の下旬なのだったか、本当にひょんなことでこの刀根健さんを知った。

刀根さんは数年前ステージ4肺がんを宣告され、負けるものか、死ぬものか、とあらゆる努力、(あらゆる代替)治療を試み、文字通り名医に会いに出かけ、名著を読み漁り、ガンが治ったと聞いたサプリメントから中国薬草、食事療法から体温を上げる方法、気功・歩行は言うに及ばずハンドヒーリングから合宿に至るまで24時間、全てを試しその結果ガンが全身を覆ってしまい完全にギブアップ。その時、刀根さんに突然シフトが起こり全てを明け渡したという。(サレンダー)

入院、放射線治療、その流れで思わずの分子標的薬のアレセンサ投薬、(それまでの代替治療での努力で、彼の体内環境はかなりクリアな下地が出来ていた、というようなことを書かれている)ゆえに、この分子標的薬を引き寄せた!とも。アレセンサに因るまさに!奇跡的回復。ほぼすべてのがん細胞の消滅。ここに至る心の軌跡をスピリチュアル的に、時には分析的に、時には自身を追い詰めながら刀根さんは書く、どのように彼の自我(エゴ)がより大きな存在に自分を明け渡したか。

日本でのベストセラーにもなっていたらしいし、大変な反響を得たらしい。S君はこれまであらゆる人々からあらゆる情報をいただいてきたと思うのに、『全くもって今の今まで知らなかった』!!!恐らくは、この絶妙なタイミング、加えてS君自身がO氏に対して治療方針の食い違いによる反発といった、S君のエゴを手放したことも大きいのだろうか。

両手にそれぞれ5パウンドのハンドウエイトを持ち、O氏は飄々と腕と上半身を鍛えている。S君はというと、数日前にもそそっかしさゆえか歩道に突き出ていたワイヤーに足を引っ掛けて右上腕〜右膝〜左頬骨をしたたか打っての打撲傷。(ひっくり返ったに至る不思議な話はのちに)

もしかして、寝耳に大水の立ち退き勧告は次なる場所に向かわされている、アップグレードを強要させられている手ごたえのある予感。全てはタイミングなので待ったなし。引越し引越し。ただひたすらこの1週間のローラーコースター並みの速力、、。(事実、8月1日現在、ありがたき友からの情報で、秋にはニューヨーク市内に再び引越しの運び)

〜〜 続く

O氏の治療歴, そして今これから。その22

可もなく不可もなく日常は遠のき、ひたすら暑さとともにあった。O氏もS君もクーラーというのも扇風機もダメで、けれどこのところの猛暑で初めてシーリングファン、というのを使った。古いビルディングなのでかなりの代物だろうに天井に引っ付いた扇風機から吹いてくるエアーはなかなかいい感じ。しかも全くの無音!

19日には数値が落ち着いたということでO氏は7回目のタクソルキモ治療。気になるALP数値もありがたいことに下がってきて、危篤時から思えば半分に減っている。しかし、後2回のキモセラピーを終えてO氏には再びスキャンによる全身と肝臓の精密検査が待っている。

S君は如何かすると プロメーテウス の神話を思い出す。ゼウスの怒りを買い三万年もの間、巨大な鷲に肝臓を啄ばまれる、それは夜になると再生されるが日中は啄ばまれそして再生し、この果てのない責め苦がヘラクレスに解放されるまで続いた!と。なんだかなあ、、すでに3年を経て、O氏の治療は長期戦だろう、そして必ず解放されるだろう。体毛もいよいよ無くなって赤ん坊のようなO氏に、S君はちょいと涙ぐむ。

つい先日、大家さんからO氏とS君の住むビルディングを売りに出したから、と突然の一方的な通達!今年いっぱいのリースは残っているので売れない限り住めるのだろうけれど、やれやれ、、、さあて、もうなんでも来い!という気分。2018年の6月から2022年の7月、この4年間はアリゾナ引越し〜癌治療でニューヨクに舞い戻り引越し〜このニューバーグに引越し〜骨折2回〜新しく引越し予定〜。いやはや、笑っちゃいますね〜。いや、すでに楽しいような気持ちが優ってきている。大笑いの人生だから。

だからと言って、一方的に言われて、はいはいわかりましたよ、っていう軟なS君ではない。と同時にここから引っ越すのであれば一刻も早くしたい、という気持ちが勝る。次行こう!次!!!

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。*方丈記より

〜〜〜 続く

O氏の治療歴、番外編:『ワクチンは体内でどんな働きをするか』

ワクチンの働き

細菌やウイルスなどの病原体によって引き起こされる、さまざまな感染症への対策として使用されている現在のワクチンには、大きく分けて「弱毒化生ワクチン」と「不活化ワクチン」がある。

弱毒化生ワクチンは病原体の毒性を弱めたものをもとにして製造されるもので、具体的にはMMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)や結核などのワクチンがこの種類だ。一方、不活化ワクチンは病原体の感染する能力を失わせたものを材料として製造されるもので、動画で紹介されていたサブユニットワクチンはこの一種である。HPVの他、インフルエンザウイルスやB型肝炎、日本脳炎などの感染症に対するワクチンはこちらの方法で製造される。

不活化ワクチンだけでは十分な量の抗体を体内で作り出せないことが知られている。そのため、不活化ワクチンには「アジュバント」と呼ばれる物質を添加し、その物質が刺激になって免疫の働きを高めている。例えば、B型肝炎ワクチンにはアジュバントとして水酸化アルミニウムが添加されている。

全く新しいタイプのワクチン

現在、世界中に感染が拡大している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンのうち、2020年に海外で認可され、日本でも2021年2月から接種が始まったワクチンは、上記のいずれの種類でもなく、全く新しいメカニズムのワクチンだ。

感染を防ぐためには、動画で紹介されていたとおり、抗原に対応する抗体が存在しなければならない。抗原は鍵、抗体は鍵穴に例えられ、それぞれの抗原に特有な抗体が生成されることで感染を防ぐ。弱毒化生ワクチンも不活化ワクチンも、病原体の抗原がワクチンに含まれている。

新型コロナウイルスのワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンと呼ばれるもので、ワクチンは抗原ではなく、mRNAが含まれている。新型コロナウイルスのmRNAは、ウイルスから抽出したものではなく、ウイルスが持つものと全く同じものを人工的に合成したものだ。

このmRNAをヒトに投与すると、ヒトの細胞がmRNAを読み取って、新型コロナウイルスの一部であるタンパク質(抗原)を作り出す。すると、このタンパク質はヒトには本来存在しないもの(異物)であるため、この抗原に対応する抗体が作り出される、ということだ。

つまり、従来のワクチンは抗原を接種するもの、mRNAワクチンは抗原そのものをヒトの体内で作り出すためのmRNAを摂取するものという違いがある。

mRNAワクチンの特徴

このmRNAワクチンのメリットは、ウイルスの遺伝情報が分かれば数週間でワクチンを開発することができる、という点だ。ウイルスなどの病原体は変異することがあるが、変異した場合でも遺伝情報さえ入手できれば、速やかに新しいワクチンを開発することが可能という。従来の方法でワクチンを製造するためには、数年から場合によっては十数年の期間を必要とする。短期間でワクチンを製造できることは、新興感染症などの発生時には効果的な対策になる。

一方のデメリットは、このワクチンはこれまで人類が未経験のものであるということだ。従来のワクチンは長い歴史に及ぶ接種データの蓄積があるが、mRNAワクチンにはない。もちろん、ワクチンの使用が承認されるためにはそれぞれの国家で治験のプロセスが必要とされる。今回新たに開発されたmRNAワクチンについても治験が行われ、安全性について確認されている。しかし、治験では接種後数カ月の状況しか明らかにならないため、抗体がどれほど持続するのかなど、長期間の経過についてはまだ分かっていないが、現在、盛んに研究が行われている。

新型コロナウイルスに対するワクチンは、従来の方法によるワクチンの製造開発も行われているが、治験の終了までにはまだ相当な時間が必要だ。人類が未経験という種類のワクチンではあるが、ワクチン接種に対するメリットとデメリットを比べて、どのような選択をするかを各人が判断しなければならない。あふれる情報の中から、信頼できる情報を私たち自身が収集して判断する力が試されているのかもしれない。

出典; ワクチンの働き