O氏の治療歴, そして今これから。その7

2021年2月7日。極寒も吹雪もそれまでは異常、と捉えられていた気象変化も今は通常現象になってしまったが、続いた大雪の止んだ或る夕方、S君は暗くなる前に、と、いつものように裏庭の一角のコンポストコーナーに、野菜くずやら失敗したザワークラウトを埋めに行った。当然、コートも着なければ財布もセルラーも鍵も持たない。多分、一瞬の魔の刻??

寒い夕方で、履き変えた長靴の底の凸凹にハマった雪が凍って、恐らくは底全面が平らにツルツルになっていたかもしれない。同様に、日中に表面だけ溶けた雪が再び凍ってこれもツルツルのアイスバーンのようになっていた(と思う)。裏庭から建物に向かおうとしたその刹那、思いっきり滑ってしまい、前回の手首骨折と同様に、頭だけは守らなきゃあという本能が働き、ひっくり返る瞬く間が、S君的には数十秒の感覚。

腰?の砕ける嫌な感じと言って良いのかな、それでもS君は、『大丈夫、骨折する訳がない。多分打撲、、もしかしてヒビ?』と、あらぬ希望的観測、そんなふうに思い込みたかったらしい。それから1時間、声も出せなければ動きも取れず、情けなく雪氷の上に転がったままじっとしていた。目の前の一階の住人が気がついてくれれば、と願ったり、二階のO氏が部屋に戻らぬS君を不審に思って、窓越しに庭をチェックしてくれれば、とも願ったが、もう日暮れて真っ暗な庭の白い雪がボーッと広がっているばかり。

渾身の力、と言いますか、上半身を立てて進行方向を後ろ向きのまま、両腕でズルズルと体を引きずりなんとか建物内部に入り込めた、が、激痛で声も出ないし加えて二階までの階段をどう登ればいいのやら。

結論から言えば、その後、緊急入院と手術により、S君は1年前には右手首、今また左大腿骨、とサイボーグ化してきている。骨粗しょう症でないことがわかったのはホッとした。参った! これではO氏を介護するどころか、反対にS君がO氏に介助を頼まねばならない。 〜〜〜〜続く