O氏の治療歴, そして今これから。その22

可もなく不可もなく日常は遠のき、ひたすら暑さとともにあった。O氏もS君もクーラーというのも扇風機もダメで、けれどこのところの猛暑で初めてシーリングファン、というのを使った。古いビルディングなのでかなりの代物だろうに天井に引っ付いた扇風機から吹いてくるエアーはなかなかいい感じ。しかも全くの無音!

19日には数値が落ち着いたということでO氏は7回目のタクソルキモ治療。気になるALP数値もありがたいことに下がってきて、危篤時から思えば半分に減っている。しかし、後2回のキモセラピーを終えてO氏には再びスキャンによる全身と肝臓の精密検査が待っている。

S君は如何かすると プロメーテウス の神話を思い出す。ゼウスの怒りを買い三万年もの間、巨大な鷲に肝臓を啄ばまれる、それは夜になると再生されるが日中は啄ばまれそして再生し、この果てのない責め苦がヘラクレスに解放されるまで続いた!と。なんだかなあ、、すでに3年を経て、O氏の治療は長期戦だろう、そして必ず解放されるだろう。体毛もいよいよ無くなって赤ん坊のようなO氏に、S君はちょいと涙ぐむ。

つい先日、大家さんからO氏とS君の住むビルディングを売りに出したから、と突然の一方的な通達!今年いっぱいのリースは残っているので売れない限り住めるのだろうけれど、やれやれ、、、さあて、もうなんでも来い!という気分。2018年の6月から2022年の7月、この4年間はアリゾナ引越し〜癌治療でニューヨクに舞い戻り引越し〜このニューバーグに引越し〜骨折2回〜新しく引越し予定〜。いやはや、笑っちゃいますね〜。いや、すでに楽しいような気持ちが優ってきている。大笑いの人生だから。

だからと言って、一方的に言われて、はいはいわかりましたよ、っていう軟なS君ではない。と同時にここから引っ越すのであれば一刻も早くしたい、という気持ちが勝る。次行こう!次!!!

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。*方丈記より

〜〜〜 続く