O氏の治療歴, そして今これから。その14

2022年5月17日。2回目のキモ治療、”タクソル” 98ミリグラム。実は、このような容量もそれ以上詳しくは聞けない。医薬品会社そのものの企業秘密も関係しているのだろう。ありがたいことにO氏の診療看護士はとても良い人で、疑問の起きる度にS君はメイルすることもままあるのだが、無駄のないきちっとした信頼おける返事や回答をその都度いただく。

ことに ”ローブレナ” を取り始めてから、副作用による緩慢なブレイン・フォグはずっと続いている。いわゆる、スローになるというのか頭の回転が鈍るというか、頭の中に靄(もや)・霧(きり)が広がるかのように不確かな状態になり、考えることや集中することが困難になる。最近のニュースによると、コロナ感染の後遺症でも過半数の症状がブレインフォグに酷似しているのが気にかかる。

O氏のケースは脳の炎症ではなく脳のガンそのものだったけれど、脳を人の中枢・コントロールタワーと置き換えてみれば、脳にひたすら感謝して寄り添いたくなる。日を追ってS君とO氏の会話は、ちぐはぐに度合いがかかり、ここしばらくS君は『ちょっと、聞いてるの?』と苛々する。S君は不確かなイングリッシュスピーカー、加えて日本語も入れて話すものだから、ブレインフォグに拍車のかかるO氏には到底間髪置かぬ返答なんて無理なのだけど。。 『知ってるでしょ、僕が日本語わからないことを!英語で喋ってよ!』と切り返される。

それが原因か、O氏は時々、’何故日本人は英語が話せないのか’ ’日本語解釈脳と英語解釈脳’ のようなビデオを見ていたりする。

、、、、O氏との足掛け16年は、自閉症スペクトラム(または高機能自閉症・アスペルガー)といかに折り合いをつけるか、の果てのない(時には不毛と思える)積み重ねだった、と、S君は述懐する。 とはいえ、S君そのものも実父との確執・その精神的後遺症に長く悩まされてもいたので、宇宙人のようなO氏には数限りなく助けられてきている。”ノレンに腕押し”というのかな、決してこちらの望む答えは期待できない、実に残念ではある。ところが逆に精神分析者やカウンセラーと話しているかのように錯覚することも多い。O氏との会話で、例えばS君は喋りながら、同時にそのおしゃべりを自らが傾聴しつつ分析している。あたかも心模様を第三者のように鮮明に把握し、理解する。(これは言うまでもなく、相手からの的確な受け答えを得られない、と言う諦めにつながる、勿論、そうじゃないことも多いので、ま、半々というところでしょう)

またS君は、O氏があたかも彼女の母親のように、彼女の父親のように演じるのを気に入って居る。こんなふうにお互いがお互いを癒しあって気付きの深さや豊かさに向かって居るのかもしれない。

〜〜〜続く